総合科学教育研究センターの有吉健太郎准教授(筆頭著者)の研究論文が「Radiation Research」 誌に掲載されました。

【論文タイトル】
Influence of Age on Leukemia Mortality Associated with Exposure to γ rays and 2-MeV Fast Neutrons in Male C3H Mice
(γ線および2MeV速中性子照射された雄C3Hマウスにおける白血病死亡に関する年齢の影響)

【研究概要】
 高密度電離放射線の生物学的効果比(RBE)を考える際、被ばく時の年齢は健康リスクにどう影響を与えるのか、小児への放射線治療が普及する昨今において、この「年齢」の影響は非常に重要な課題である。しかし、これまでに高密度電離放射線影響に対する年齢影響についてはほとんど知見が存在しない。本研究は、放射線誘発骨髄白血病(AML)のモデル動物であるC3H/HeNrs(雄)を用いて、高速中性子(〜2 MeV)誘発AMLへの年齢影響を検討した。C3H/HeNrs マウスを 1週齢(新生仔)、3週齢(幼仔)、8週齢(成獣)、または 35 週齢(老齢)で 137Cs γ 線(0.2、0.5、1.0、2.0、3.0 Gy)または中性子(0.0485、0.097、0.194、0.485、0.97 Gy)照射を行い、SPF条件下で生涯にわたって観察した(各群n=50)。骨髄性白血病(AML)死亡率のハザード比(HR)とRBE、およびこれら2つのパラメータの年齢依存性をCox回帰分析したところ、中性子被曝は、線形線量反応(直線性)でHRを増加させた。線量あたりのHRの増加は被曝時年齢に依存し(生後1週または3週では有意な線量依存性はなかったが)、8週で1Gyあたり5.5(γ線)、1Gyあたり16(中性子)、35週で1Gyあたり5.8(γ線)、1Gyあたり9(中性子)と有意に増加した。中性子のRBEは2.1(95%信頼区間、1.1~3.7)で、年齢依存性はみられなかった。また、AML以外の白血病として、リンパ系腫瘍の発生は放射線被曝との相関が見られなかった。マウスを用いた今回の実験により、被ばく時年齢と放射線誘発AMLによる死亡率増加の傾向(8週、35 週で有意)が見られた事は、これまでの疫学調査による結果とも一致している。