保健科学部理学療法学科の高橋仁美教授らの研究論文が「Respiratory Medicine」に掲載されました。

「Functionally relevant threshold of inspiratory muscle strength in patients with chronic obstructive pulmonary disease(慢性閉塞性肺疾患患者における吸気筋力の機能的な閾値)」

 男性の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、「この値を下回ると運動耐容能が低下する可能性が高い」という吸気筋力の閾値を特定することを目的とした。COPD患者113名を対象に、最大吸気口腔内圧(PImax)を測定し、予測値に対するパーセンテージ(%PImax)を算出した。6分間歩行距離(6MWD)< 350mを運動耐容能低下と定義した。閾値の算出にはROC分析を用い、高い特異度(> 0.90)かつその中で最大の感度となる値を閾値とした。P < 0.01の場合、統計的に有意と判定した。データが欠落している14名と女性3名が除外され、96人の男性(年齢:74±6歳、1秒量:56.5±26.2%予測値)が最終的な解析対象となり、ロジスティック回帰分析にて、身長と1秒量の影響を調整した条件で、PImaxと%PImaxは6MWDと有意な関連を示した(PImax:オッズ比 [99%信頼区間] 0.95 [0.92-0.98]、%PImax:0.97 [0.95-0.99])。 ROC分析の結果、PImaxと%PImaxの曲線下の面積(ACU)は同等であった。運動耐容能の低下を予測するための、PImaxおよび%PImaxの閾値は、それぞれ45.1 cmH2O、66%であった。陽性尤度比は、PImaxは4.44、%PImaxが5.00であった。COPDの男性における吸気筋力の閾値は、臨床家が患者の吸気筋力が6MWD ≧ 350 mを達成するために十分であるかどうかを評価すること、吸気筋トレーニングの対象とすべき患者を特定することに役立つと考えられた。

https://doi.org/10.1016/j.rmed.2021.106625