診療放射線科学科の大葉隆講師(筆頭著者)の総説論文が令和6年12月付で国内和文誌の「日本放射線事故・災害医学会雑誌」へ掲載されました。

【論文タイトル】
原子力災害での体表面汚染から吸入による甲状腺等価線量を導き出すモデルの不確実性

【論文概要】
 福島第一原子力発電所(福島第一原発)事故時に、多数の小児避難者を対象に甲状腺線量を実測することは困難でした。本報告では、甲状腺線量を推計する手法の不確実性を検討し、これらの不確実性の因子において既知的であるか、未知的であるかを議論することが目的でした。このモデルの既知的な不確実性の因子としては、大気中の放射性核種割合や沈着速度補正係数にかかわる化学組成、GMサーベイメータ装置に関する不確実性、甲状腺等価線量への換算係数が挙げられました。また、未知的な不確実性の因子としては、体表面汚染状況における乾性沈着と湿性沈着の混在における沈着速度の不確実性や、体表面汚染における測定者の習熟度、自然脱落率の個人差や暴露からの汚染検査までの時間経過が該当しました。今後、未知的な不確実性の因子について、改善が進んでいけば、体表面汚染から甲状腺等価線量を導き出すモデルについて、精緻化が進んでいくと考えます。

 この報告は、原子力災害時の小児における甲状腺等価線量を推計するための手法とその不確実性を整理して記載しております。今後の原子力災害の対策として役立つ報告であると考えます。

論文掲載雑誌
日本放射線事故・災害医学会雑誌: 7(1), 5-14, 2024
http://jaradm.org/gakkaishi.html