診療放射線科学科の大葉隆講師が共著者の国際共同研究の研究論文  (筆頭著者:ISGlobal【バルセロナ世界保健研究所】 Liudmila Liutsko氏)が令和5年12月付で「Journal of Radiological Protection」に掲載されました。

タイトル:
Resilience after a nuclear accident: readiness in using mobile phone applications to measure radiation and health indicators in various groups (SHAMISEN SINGS project)(原発事故後の復興力:携帯電話のアプリケーションを使用してさまざまなグループの放射線と健康指標を集約するための心構え(SHAMISEN SINGS プロジェクトより))Journal of Radiological Protection, 43, 041511, 2023.

【論文概要】
 SHAMISEN SINGSプロジェクトは、「Nuclear Emergency Situations:  Improvement of dosimetric, Medical And Health Surveillance—Stakeholder INvolvement in Generating Science(原子力災害対応:線量測定、医療および健康調査の向上-科学の育成への支援者の参加)」の頭字語の組み合わせであり、2017年~2020年に実施されました。EUから研究資金の提供を受け、国際共同研究として、ヨーロッパの国々だけでなくウクライナや日本の研究者も参加しました。日本からは福島県立医科大学の研究者らが参加しており、大葉講師もその一人です。
 SHAMISEN SINGSプロジェクトの目的は、原子力災害時に専門的な関係者の支援を受けながら、携帯電話のアプリケーションを通じ、被ばく線量と健康指標に関するデータから、原子力災害の復興における住民参加を促すための方法を研究することでした。
 今回の論文報告は、携帯電話のアプリケーションを通じた被ばく線量と健康指標に関するデータへの知識や関心、使用経験についての国際的なアンケートの集計結果をまとめたものです。アンケートの結果、回答者は被ばく線量や健康指標に関する知識を得る情報源や、理想的なアプリに求められる機能について、回答者の背景ごとに異なる好みを示しました。その背景として、回答者の年齢や性別、また過去に原子力災害の影響を受けた国や地域の出身かどうかといった側面が見られました。結論として、このようなデータを専門家や行政が活用することにより、影響を受けた個人へより丁寧な支援が可能になるだけでなく、より精度の高い疫学研究が遂行出来るようになると考えられます。
 今回の論文のベースであるSHAMISEN SINGSプロジェクトの報告書は、以下から閲覧可能です。

 https://radiation.isglobal.org/shamisen-sings/wp-content/uploads/sites/11/2020/07/WEB-Shamisen_Booklet_A4_JP.pdf

 この報告書は、EU加盟国の原子力災害時の放射線防護に関する行政の施策に役立てられます。将来的には、日本でも役立てられるかもしれませんね。

論文掲載雑誌 https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6498/ad115a