保健科学部(総合科学系)の有吉健太郎准教授が筆頭・責任著者を務めた研究論文が「Journal of Radiation Research」誌に掲載されました。

Exosome-like vesicles released from ob/ob mouse adipose tissue
enhance cell survival of cells with radiation-induced
genomic instability
(肥満マウス脂肪組織から出る細胞外小胞は、放射線誘発ゲノム不安定性を有する細胞の生存率を上昇させる)

【研究概要】 
 これまでの疫学研究により、肥満が癌発症の危険因子であることが示されていますが、肥満と癌発症を結びつけるメカニズムは依然不明です。近年、様々な組織細胞由来のエキソソーム様小胞 (Exosome-like vesicles:ELV)と呼ばれる細胞外小胞が、生体の代謝恒常性を制御していることが報告されています。本研究では、肥満マウス (ob/ob)と対照マウス (C57BL/6)の脂肪組織から放出されるELVが、マウス由来細胞 (m5S) の放射線感受性に影響を与えるかどうかを調べました。また、放射線被ばく後に生き残った細胞におけるゲノムの不安定化を調べるため、小核 (micronucleus: MN) 頻度を調べました。 その結果、肥満マウスのELVが、3 GyのX線を被ばくしたm5S 細胞の生存率を上昇させるとともに、被ばく後の生存細胞において、MN 頻度が上昇していることが判明しました。 これらの結果は、肥満マウス脂肪ELVが、放射線によってゲノムが不安定化した細胞の生存率を上昇させることを示唆しています。

https://academic.oup.com/jrr/advance-article/doi/10.1093/jrr/rrac102/6994393