診療放射線科学科の大葉隆講師が共著者の研究論文が「Journal of Radiation Research」誌の令和4年11月号に掲載されました。

Estimation of children’s thyroid equivalent doses in 16 municipalities
after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station accident
福島第一原子力発電所事故後の16市町村における子供の甲状腺等価線量の推定

【研究概要】
 2011年の東京電力福島第一原子力発電所(福島第一原発)事故によって放出された放射性物質による甲状腺がんに関する危惧は現在も課題となっております。この課題に取り組むためには、福島第一原発事故時の甲状腺の内部被ばく線量を推計する必要がありました。私たちは先行研究から、放射性物質の呼吸による吸入から甲状腺における内部被ばく線量を再構築する方法論を構築してきました。この方法では、福島県「県民健康調査」の基本調査による個人の行動記録と大気拡散シミュレーション(事故で放出された放射性物質の拡散していく様子をコンピュータで再現すること)から推定した大気中放射能濃度のデータベースを用いることによって、吸入による甲状腺内部被ばく線量を7市町村で評価してきました。
 今回の研究論文では、この方法論を発展させ、3,256名の行動記録より福島県の浜通り地方や中通り地方の16市町村における小児の年齢帯における甲状腺の内部被ばく線量を評価しました。この線量は放射性物質を空気からの吸入と飲料水からの摂取の個人毎の合算値です。推定した16市町村の1歳児甲状腺内部被ばく線量(地区平均)は、伊達市の1.3 mSvから南相馬市小高区の14.9 mSvまでの間に分布することがわかりました。線量推計の妥当性を検討するため、今回の研究論文である甲状腺の内部被ばく線量の分布と、2011年3月に実施された1,080人の小児の甲状腺放射能の直接的な測定値に基づくいわき市、川俣町、飯舘村、南相馬市の内部被ばく線量の分布と比較したところ、よく整合しておりました。今後、私たちの方法論は福島第一原発事故後で懸念事項となっている甲状腺がんに関する疫学研究に寄与すると考えております。

 こちらは電子ジャーナルで閲覧が可能です。
 https://academic.oup.com/jrr/article/63/6/796/6701780
 https://doi.org/10.1093/jrr/rrac058