教員からのメッセージ
素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理 天文学
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講義の受講しやすい状態
2023/10/25自然界に存在する素粒子は「ボゾン(ボーズ粒子)」と「フェルミオン(フェルミ粒子)」と呼ばれる2種類の粒子に大別できます。ボゾンの代表例は光子です。一方、フェルミオンの例としては、電子や陽子・中性子などがあります。ボゾンはいくつでも同じ場所(「状態」という方が正確ですが)に入り込めますが、フェルミオンには「同じ場所に入り込めるのは1つだけ」という制約があります。ここが両者の決定的な違いです。この制約は「パウリの排他原理」と呼ばれています。この制約のため、電子を多く持つ原子(多電子原子)では、原子核の周りにある電子は全てがエネルギーの低い同じ場所に収まることができません。エネルギーの低い場所から1つ1つ順に空席が埋まっていきます。
私たち生物も原子(陽子・中性子・電子)から構成されているので、個体全体ではフェルミオン的な性質を持ちます。なので、1つの椅子に2人は座ることができません。もし、私たちがボゾンならきっと「満員」という概念は存在しないのでしょう。
さて、先日の講義の開始前のこと、講義室で準備をしながら学生の着席する様子を眺めていました。はじめは2・3人のグループが比較的ランダムにいくつかあったのですが、学生が次第に増えてくると、(教卓から遠い)出入り口に近い席から埋まっていくようでした。この席の埋まり方は、上述の多電子原子と同じだなぁ、と苦笑しました。さしずめ、学生が原子核の周りの電子で、出入り口が原子核、出入り口に近いほどエネルギーが低く、(残念ながら)私に近いほどエネルギーは高くなる、といったところでしょうか。学生は無意識にエネルギーの低い状態を選び、1つ1つ座席を埋めていったのです。エネルギーの低い状態の方が講義も受講しやすいのでしょう。