教員からのメッセージ
検査血液学、血栓止血学、臨床検査医学、認知科学
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伝える、ということ
2023/09/276月に、カナダのモントリオールで開催された第31回国際血栓止血学会に参加してきました。国際学会に前回参加したのは、コロナ前の2019年なので、実に4年ぶりでした。
血栓止血学会は、出血や血栓を対象とする学会です。出血や血栓の病態メカニズムや治療法、検査法などに関し、基礎から臨床まで幅広く扱う学会です。参加者は医師がメインですが、最近では臨床検査技師も増えており、また基礎系研究者も多数参加しています。出血や血栓は多くの診療科が関わる病態なので、血液内科をはじめ、小児科、救急科、循環器内科、膠原病内科、神経内科、腫瘍内科、整形外科、産科婦人科など幅広い分野から参加者が集まることが血栓止血学会の大きな特長です。私は今回、血液凝固異常症の原因を鑑別する新しい検査法の研究成果を発表してきました。
国際学会は、魅力に溢れています。世界の最先端の研究に触れると心が躍り、新しいアイデアが浮かんできたりして、ワクワクします。また、海外の学会はディスカッションが積極的なので、多くの人と気軽に意見交換できることも魅力です(尊敬する海外の先生とも気軽に話せちゃいます)。学術的な話はもちろん、話が弾むと、文化的な話にまで広がることもあり、知識が深まり、物事を考える視点が広がります。また、海外のグルメを楽しめることも魅力ポイントです。
国際学会では、基本的に、英語で会話します。だからといって、完璧な英語能力が求められるわけではありません。自分が伝えたいこと話したいことを、身振り手振り交えて、言葉で表現すれば良いのです。もちろん、これは英語に限ったことではありません(日本語でも同じです)。大切なことは、人に伝わるように・理解してもらえるように工夫して話すことです。このスキルは、一朝一夕に身につくものではありません。普段から、「人に伝わるように」ということを意識して話す習慣をつけると良いと思います。私が担当する実習を含め、本学の実習では、実習したことを発表(プレゼン)する機会がたくさんあります。実習では、専門的な知識や技術の習得だけでなく、発表スキルを身につけることにも取り組んでみてください。 -
人生なにがあるかわからない 転機を大切に!
2022/07/27私の専門分野は血液検査と認知科学です。血液検査では、“血液が固まる過程”を調べる血液凝固検査を専門としており、この検査は出血や血栓のある患者さんの病態を調べるときに行われます。認知科学では、脳波を用いてヒトの脳機能を調べており、ヒトが音を聞いたとき脳内でどのように処理されているかを研究しています。この2つの分野は(おそらく)ほとんど関連しておらず、それぞれを並行して進めているという稀な人生を歩んでいます。今回は、その経緯をお話ししようと思います。
臨床検査技師を志した高校生のときは、顕微鏡で細胞を見て異常(異型)等を見つける細胞診に興味を持っていました。しかし、大学3年生のとき転機が訪れました。脳波検査の試験勉強中にインターネットで調べものをしていたら一つのニュースに遭遇しました。「心の痛みを(脳)科学的に証明した」という論文に関するニュースです。「ヒトの心、脳って面白い!」とワクワクしたのを今でも覚えています。それ以来、すっかり私の興味関心はヒトの脳機能に移ってしまい、大学卒業後は脳研究所という研究施設に進みました。そこで私は人生の師匠となる先生に出会い、脳機能の研究に従事し、いまに至っています。
脳研究所に進んだ後、今度は新潟大学病院に臨床検査技師として就職しました。脳に関する研究をしてきた私が、当時の上司から命ぜられた仕事は、血液凝固検査でした。なぜ血液凝固検査の担当なのか、いまだに真相はわからないのですが、ここでも仕事をするなかで一つの転機がありました。医師からの「検査結果と(患者さんの)病態が合わない」という苦情です。そこで私は、検査結果が正しいことを実験で示したり、論文を調べたりしました。その結果、検査のやり方により検査結果が異なる場合があることがわかり、私たちの検査法は正しく、その患者さんにとってはそれまで検出されていなかった病態を検出することができました。それ以来、私は検査法にも興味をもち、新しい検査法の開発や、検査法の標準化(日本における検査手順の統一化)に関する研究を行っています。
このような経緯で私は今、血液凝固検査とヒト脳機能の仕事に携わっています。高校生の頃に思い描いていた検査技師像とは(かなり)異なり、人生いつなにがあるか(どんな転機があるか)わかりません。ただ、どんなことにも(どんな仕事にも)好奇心をもって取り組むと面白いと思います。なぜなら、どんな分野でも、「わかっていないこと」があります。そのわかっていないことを自分で見つけたときの高揚感、さらに、それに取り組んで何か結果を得たときの達成感は、ハマります。受験や就職は一つの転機ですが、それ以降も、何歳になっても転機は訪れるでしょう。その転機が自分の思っていなかったことだとしても、嫌にならず、その機会を大切にして好奇心をもって取り組んでみると、新たな世界が広がると思います。転機を大切に! -
自己紹介(珍しい!?検査技師の人生)
2022/04/27はじめまして。4月から臨床検査学科に着任した松田将門(まつだまさと)と申します。出身は新潟県です。3月末まで新潟大学病院に勤務しており、4月から教員として福島に来ました。これまでずっと新潟に住んでおり、今回、人生で初めて新潟を離れて暮らし始めました。
私は小中高を卒業後、新潟大学医学部保健学科に進み、卒業と同時に臨床検査技師の国家試験に合格しました。卒業後、病院には就職せず、新潟大学にある脳研究所という研究施設に大学院生として入門しました。そこでは、脳波を用いて、ヒトの脳機能について研究していました。大学院修了後は、新潟大学病院に就職しました。そこでは、血液検査の中でも“血液が固まるかどうかを調べる検査”(これを血液凝固検査といいます)について、病院の検査室で日常検査に従事し、またその研究もしていました。大学病院に在職中、社会人大学院生として博士課程に進学し、脳機能の研究もしていました。
私の分野は、ヒト脳機能と血液凝固検査です。講義や実習、研究でも、それらの分野を中心に担当させていただきます。「その2つの分野は関連しているのですか?」とよく聞かれるのですが、自分でも関連性は見つけられていません(笑)。2つの分野それぞれを、純粋に、科学として楽しんでいます。そのキッカケや面白さとは…紙幅の都合上、次回以降にお伝えできればと思います。講義や実習を通して、学生のみなさんに、専門知識の習得に留まらず、科学の楽しさを味わってもらえるよう努めていきます。よろしくお願いします。