教員からのメッセージ
臨床微生物学、臨床検査学
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敵を知り、己を知れば百戦危うからず
2024/04/24医療機関には施設内の感染対策を実働的に担う感染管理チーム(ICT)が設置されています。ICTは医師・薬剤師・臨床検査技師・看護師など様々な職種で構成されており、それぞれの職種性を活かしたチーム医療が行われています。
福島県は2023年に東北初の感染管理認定看護師教育課程を立ち上げました。写真はその課程の一環で私どもが担当している微生物学実習の一風景です。受講生の皆さんは普段触れることのない顕微鏡観察、培養検査、薬剤感受性検査、遺伝子検査などについて真剣に、そして興味深く学んでいました。感染対策は一筋縄ではいきません、まずは敵を知ることが大切ですね。
リンク名:感染管理認定看護師教育課程
URL:https://www.hoshipital.jp/kodosenmon.html -
またひとつ壁を乗り越えました
2023/02/226月のことになりますが、臨床検査学科2年生の初めての採血実習が無事に終了しました。まずは練習用の採血キット(写真)を相手にいろいろな採血方法で繰り返し練習し、自信がついたところで実際に採血を行いました。採血においては上手な採血手技はもちろんですが、患者さんへの説明と不安の解消、安全対策の確実な実施、効率的な器材準備、トラブル時の迅速対応など様々な対応力が求められます。学生たちは一つ一つの手順を確認しながら何度も何度も練習を重ね、みるみる上達していました。もちろん、まだまだ経験不足ですので実際の採血業務を行えるようなレベルではありませんが、臨床検査技師になるための壁をまたひとつ乗り越えることができたことは間違いないと思います。
写真の採血キットには“SASUKE”という名前がついています。針を刺すから“刺すけ”のよう?で、針を刺すために生まれた新素材“Sassina;刺っしーな”が使われているとのことでした。(https://www.kyotokagaku.com/jp/products_data/mw50/)
大阪生まれの私にはまったく違和感のないネーミングです。 -
もう一人の自分
2021/11/24竜とそばかすの姫、アバター、マトリックス・・・これらの映画はどれも“もう一人の自分”を描写した映画です。描写の目的や方向性はそれぞれ異なりますが、仮想空間では現実世界にはない能力を手に入れる点は共通の描写だと思います。自分にはない能力が手に入る世界、そんな世界が本当にあったら怖いように思いますが、一度行ってみたい気もします。
25年くらい前の話ですが、とある学会の教育セミナーの講演を頼まれた際に未熟者にも関わらず安易に引き受けてしまったことがあります。四苦八苦しながらなんとかスライドは作成したものの前日の夜になっても発表内容がまとまらず焦りと苛立ちだけが募っていました。まったく進展がみられないことから「もう間に合わない。明日、会場で謝ろう。」と諦め、寝ることにしました(1時頃)。すると翌朝(3時頃)、突然目が覚めて、頭の中に次々と発表内容が浮かんでくるではないでしょうか!しかもスライド構成の変更点まで!これ幸いにとメモを取り、スライドを修正し、学会場に乗り込んで無事に講演を終えることができました。
当時は、“人間、あきらめも大事、諦めの境地に至ればなんとかなるもんやな!”と、またまた安易に考えてしまいましたが、今思うに、もしかするともう一人の自分が助けてくれたのかもしれませんね。いや、そうに違いない。誰でも心のどこかにもう一人の自分を持っているのだと思います。
写真は、こちらもかなり前のものですが、某学会で発表した際の写真です。シンポジウムのテーマが“ローマは一日にしてならず”でしたので、これにちなんで演者は全員、月桂冠をつけて発表しました。このような趣向を凝らした企画を行う学会もあります。 -
報われるまでするのが努力?
2021/01/13私の好きな言葉のひとつに“努力は報われる!”があります。小さな努力をコツコツ積み重ねていればいつか必ず喜びや成果に繋がると信じていますし、これまでの人生の中でも多くの実体験をしてきました。このことを息子たちに伝えると、声をそろえて「努力すれば報われる?そうじゃないだろ。報われるまで努力するんだ。」との返答が戻ってきます。ご存知の方も多いと思いますが、これはFCバルセロナの名選手リオネル・メッシの名言です。
写真は私の生涯の趣味であるスキーを楽しんでいる場面です。年を重ねるごとに体が思うように動かなくなってきましたが、何故かスキーに関しては今でも年々上達しているのを実感できます。やはり小さなコツコツは人生を豊かにしてくれますね。 -
興味が世界の常識を変える
2020/10/0717世紀に、オランダ人のアントニ・ファン・レーウェンフックは自ら作製した簡素な顕微鏡(最大倍率266倍)で細菌や原虫を観察し詳細な観察記録を残しました。さらに、細菌(当時は細菌という概念はないので“小動物”と記載)は自然に発生するのではなく親から生まれることを主張しました。19世紀になってフランスのルイ・パスツールが培養技術を用いて自然発生説を否定することになりますが、その200年も前にレーウェンフックは自作の顕微鏡のみを用いた実験でこれを発見していました。
レーウェンフックは呉服屋の商人であり、素人の趣味で行われていた研究であったことから日の目が出るまでに長い年月を要しましたが、現在の微生物学の発展に大きく貢献した人物です。
写真は下痢を引き起こすランブル鞭毛虫という原虫を顕微鏡(200倍)で観察した写真です。どこにいるかわかりますか?レーウェンフック氏は自身の下痢便を観察してランブル鞭毛虫の発見にも貢献しました。興味がある方は下記URLの論文をご覧ください。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsb/69/2/69_315/_pdf
ヒント:右側の小さな写真はランブル鞭毛虫を赤く染色して観察したものです。大きさと形の参考にしてください。 -
ミクロの世界からの挑戦
2020/08/12大阪府出身です。専門は臨床微生物学(微生物検査)です。
微生物検査は、培養技術や分子生物学的技術等を駆使して感染症の原因微生物を特定する検査です。個々の患者さんの診療はもちろんのこと、適切な感染対策をすすめるうえでも重要な検査です。新型コロナウイルスがまさにそうですが、近年は数年に一度の頻度で新たな病原微生物が出現しています。また、薬が効かない薬剤耐性菌の増加も世界的に大きな問題となっています。皆さんも臨床検査技師になって、ミクロの世界からの挑戦に対峙しませんか?
写真は17世紀のペスト終息を記念してウイーンに設置された記念柱です。
[趣味]スキー、サッカー(サッカーは鑑賞のみ)