教員からのメッセージ
臨床生理検査学、内科学(一般内科、循環器、消化器、呼吸器)
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生理検査
2024/03/13私は本学部では、「生理検査」を主に担当しています。臨床検査は「検体検査」と「生理検査」に大別され、「検体検査」では採取した血液や尿・組織などの検体を対象に検査を行い、「生理検査」では、直接対象者から、臓器の形態や機能に関する生体情報を収集します。生理検査を細分化すると100弱もの種類がありますが、代表的な検査として、心電図・脳波・筋電図などの電気生理学的な検査、腹部・心臓・血管・甲状腺・乳腺などの様々な臓器を評価するエコー検査、呼吸機能や聴力検査などのように流量や流速・音圧などに関する検査などがあります。生理検査は、現場に患者さんがいて、その場で結果が出るなどの特徴があります。エコーや電気生理学的検査など、患者さんの変化をリアルタイムで観察できる点は非常に魅力的です。しかし、患者さんの不安を減らし安全に良い検査を行うためには、適切なコミュニケーションや臨機応変な対応が重要です。声掛け1つの違いで、検査ができなかったり、不安が高まったり、結果に大きく影響したりします。その為、正しい検査が実施できているかを常に確認しながら、適宜お声かけしながら患者さんと共同で検査を進めて行きます。
本校の入校時期(2024年春)、本学部(4年生大学)の一期生・最上級生である3年生は進路について、臨床へ進むか、進学するか、研究するか、メーカーなどへ勤務するか、自分が好きなのは検体検査系か生理検査系かなど、様々な選択肢の中で真剣に悩んでいます。検体検査も生理検査もどちらも重要で土台の部分はバランスよく修得してもらいたいですし、どちらの分野でもコミュニケーションは重要です。3年生を見ていると、授業や実習を通じて医療に関する知識や技術は向上しています。また、保健科学部内、医学部や看護学部を含む学内外の友人との関わり、部活やアルバイトなどの課外活動や社会経験を通して、コミュニケーション能力や現場での対応力が向上し、みんな逞しくなったな、将来様々な分野で活躍できるなと確信しています。来春、臨床検査はもちろん、理学・作業・放射を含む本学部卒業生が希望する進路へ羽ばたけるよう祈念しています。
高校生のみなさん、興味があれば、オープンキャンパスなどで本学を見学ください。百聞は一見に如かずです。人と接する仕事が好きな人、黙々と着実に進める仕事や研究が好きな人、色んな適性のある方が興味を持って頂ければ嬉しく思います。 -
心不全って知っていますか?
2022/12/28みなさんは『心不全』という病気をご存じでしょうか?少子高齢化の進む日本で年間20万人以上の方が入院を要している病気です。日本循環器学会は、『心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気』と定義しました。やや専門的な表現では、『慢性の心筋障害により心臓のポンプ機能が低下し、末梢主要臓器の酸素需要量に見合うだけの血液量を絶対的にまた相対的に拍出できない状態であり、肺、体静脈系または両系に うっ血を来し日常生活に障害を生じた病態』となります。ある種の悪性腫瘍よりも生命予後は不良であり、4年生存率は約55%とされています。また、日常生活の質の低下、介護度の悪化などにつながりますので、ご本人はもちろんのこと、ご家族の負担にもつながります。しかし近年、おくすりやその他の様々な治療も進歩していますので、なるべく早期に発見し治療を開始することが重要です。一方、心不全は発症自体の予防が可能です。心不全の原因となりうる高血圧、糖尿病などの生活習慣病を管理し、禁煙や定期的な運動を継続し、心不全の発症を予防することがなによりも肝要です。
さて、心不全の診療にはチーム医療が必須です。診断には、息切れやむくみなどの代表的な症状や身体所見に加え、心電図、胸部X線、血液検査、心エコー図検査、CT、MRI、心臓カテーテル検査などの各種検査が必要であり、臨床検査技師や診療放射線技師などの“病気のサインを見つける”医療専門職の力が必要です。治療に際しては、くすりの専門家である薬剤師、心臓リハビリテーションに関わる理学療法士や作業療法士などの“運動機能回復や生活行為向上のスペシャリスト”の力が必要となります。家庭での生活維持に関する社会資源の有効活用に際して、管理栄養士、ソーシャルワーカーや介護士などの助けも必要です。そして、診断から治療、医療と生活をつなぎ包括的な管理を担う看護師の方は心不全におけるチーム診療のキーマンとなります。みなさんも専門医療職としてチーム医療の一員をめざしませんか。 -
よい睡眠をとりましょう!
2021/09/22睡眠は身体の疲労回復と修復機能に大きな役割をもちます。人の睡眠にはレム(rapid eye movement: REM)睡眠とノンレム睡眠があり、レム睡眠では骨格筋の筋トーヌスは抑制され、骨格筋を休め、ノンレム睡眠では、主に脳を休め、記憶の強化や嫌な記憶の消去が行われます。通常、入眠初期にノンレム睡眠となり、一晩の睡眠中に、1周期約90分間でノンレム睡眠とレム睡眠を4-5回繰り返します。特に最初のノンレム睡眠にあたる90分間は、『黄金の90分』とも呼ばれ、成長ホルモンの分泌が最大となり、身体の疲労回復や修復に働くとともに、アンチエイジング、自律神経調節なども行われ、成長・記憶・美容・精神衛生など多面的な回復にも関与します。一方、睡眠不足や不眠症による交感神経系の緊張や、視床下部―下垂体―副腎皮質系の亢進は、高血圧、糖尿病や心血管疾患の発症につながる場合もあります。
睡眠衛生に関して、厚生労働省精神・神経疾患研究委託費 睡眠障害の診断・治療ガイドライン作成とその実証的研究班 平成13年度報告書「睡眠障害対処12の指針」が公表されていますのでいくつかご紹介します。1) 規則正しい食事や運動習慣を心がけましょう、 2) 同じ時刻に起床しましょう(早寝早起きではなく、早起きが早寝に通じます)、3) 起床後にまず朝の日光を浴びましょう、逆に夜間の照明やスマートフォンなどを避けましょう、4)就床前4時間のカフェイン摂取、1時間前の喫煙などの刺激物を避け、寝る前にはぬるめの入浴を行うなど自分なりのリラックス方法をもちましょう、5) 昼寝をするなら15時前の20-30分ほどとしましょう、6) 寝酒は不眠のもとになります、7) 日中の眠気が強いとき、激しいいびき、無呼吸などを認める場合は医療機関への受診を考慮してください。
受験生や学生の方もよい睡眠をとり、充実した日常をお過ごしください。 -
合縁機縁―人生は偶然と選択の連続かなー
2021/05/25臨床検査学科の義久と申します。今、進路に悩みながらホームページをご覧いただいている方もいるかと思います。人生の選択や節目に関連して、桑弧蓬矢、青雲之志、初志貫徹、貴貨可居、千載一隅、臨機応変、心機一転、生生流転、前程万里、前途洋洋など様々な格言があります。古来より、人生の岐路や変化に悩む瞬間の後押しをしたことばなのだと思います。私は、九州で生まれ、関東を経て、本学入学を機に初めて東北福島へ移り住み、早30年が立ち、この春、保健科学部の新入生を迎え、共に第一期生となりました。これまでの数十年、大小いろんな選択をしてきました。進路で学部選択に悩み、進学地では、東北・関東・九州などで悩みました。卒業後、一般内科全般を修め町のお医者さんになる気満々でしたが、大学病院などで診療に加え、様々なご縁にて、教育や研究に取り組むようになり、診療・教育・研究と3足のわらじを履くこととなりました。ちなみに教育や研究も最後は臨床に還元されていきますので、それぞれに魅力があります。振り返ると、同僚医師はもちろんのこと、看護師、薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師、臨床工学技士、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、管理栄養士など〇〇師や○○士といったさまざまな専門職の方々と共に診療や研究をさせて頂き、今回、その育成に関わる機会も頂きました。当初想像していた進路とは異なりますが、合縁機縁による好機到来と考え、日々楽しんでいます。医療系の進路を考えている皆さん、当初の思いもそしてその変化も大事かと思います。一方、石の上にも3年ともいいますので、きちんと腰を据えることも大事です(ちなみに本学部は4年間です)。是非、駅前キャンパスでお会いしましょう。