教員からのメッセージ
放射性薬剤学、組織化学、タンパク質科学、放射線科学
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リスクマネージメント
2023/11/15福島に来て3年目に突入しました。福島を含めた東北地方には多くの良い温泉があります。休みの日には温泉に行くのが私の中ではすっかり定着してきました。温泉宿でゆっくり過ごすのも良いものです。ただ温泉宿で気を付けなければならないこともあります。みんなが同じ浴衣を着ていた場合、自分の浴衣が入った籠が分からなくなることです。一度、間違って他人のパンツを履きかけたことがあります。未遂で終わったので良かったですが、せっかく温泉で温まったのに、肝を冷やす出来事でした。
医療においても患者さんの取り違えがたまに起こります。それは絶対に起こってはいけない事故です。そんなリスクを回避するために、今では医療行為を行う前に複数の医療者で患者さんの名前を確認することが一般的になっています。誰か一人が間違いを犯したとしてもそのミスが医療事故へつながらないように医療機関では組織的なシステムを構築しています。誰でもミスは起こします。大事なのはそのミスが大きな事故(リスク)につながらないように事前にシステムを構築しておくことです。そうすることをリスクマネージメントと言います。診療放射線科学科でも様々なリスクマネージメント法を医療安全管理学という学問で勉強します。今までに起こった医療事故を分析し、事故を防ぐための様々なリスクマネージメント法がすでに開発されています。患者さんに安心して医療行為を受けてもらうために学生は医療安全管理学を勉強しています。
ということで、温泉で他人のパンツを間違って履かないための私のリスクマネージメント法ですが、誰も履かないような派手なパンツを履くことにしています。 -
私の研究、診断・治療薬剤について
2022/09/213回目の寄稿にてネタを思案したところ、まだ自分の研究について詳細な解説していませんでした。今回は少し真面目な話として診断・治療薬剤の話をしたいと思います。
病気の治療に重要なのは診断です。診断を間違えると治る病気も治りません。そこで必要となるのが診断用の薬剤になります。最近では薬の開発が進み、病気の組織に多く現れる分子を標的に集まる薬が開発されています。それを分子標的治療薬と言います。この治療では病気の組織に標的分子があることを確認する必要があります。そこで分子標的治療薬に信号を出すように細工した薬剤を作ります。この用いる信号には2種類あり、①放射線、②色素があります。以下にそれぞれを説明します、図も参考にしてください。
①分子標的薬に放射性同位元素を結合させて体内に投与します。次に放射線を検出する機械で検査することで体内のどこから放射線が出ているのか調べます。出ている場所が病気の組織と同じならその分子標的薬が集まるので効果があることが判ります。そのようにして分子標的薬の効果を診断することができます。
②またがんの集学的治療では外科手術と薬物治療を組み合わせます。まず手術でがんの病巣を取り出し、その後に薬を用いて治療します。その時、取り出したがんを用い、色素を結合させた分子標的薬を反応させます。がんに色素が結合したことが顕微鏡で判れば分子標的薬が効くと診断できます。外科手術で取り切れなかったがんや微小転移したがんを分子標的薬で治療することができます。
さて、上記で診断のための薬剤がどのようなものか分かったと思います。次に治療薬について説明します。①の放射線を分子標的薬に付ける技術を治療に応用することができます。放射線は簡単に言うと診断に使う放射線と治療に使う放射線の2種類があります。診断用は透過性が強い、つまりは体外へ出た放射線を検出することで薬の集まった場所を調べることができます。それに対し治療用の放射線は細胞障害性が強い放射線を用います。それは短い距離しか飛ばない代わりに細胞を壊す作用の強い放射線です。がんの病巣に集まった薬から治療用の放射線ががん細胞に多く照射され、がん細胞が障害されることで治療を行うことができます。
私の研究はこのような診断・治療薬剤の合成や評価法の開発を行っています。化学合成や組織化学などいろんな方法を用いて研究を行っています。学生さんなど多くの人にそのような薬があることに興味を持ってもらえたらと思っています。
図 放射線や色素を用いた診断薬剤について -
自分を磨く
2021/06/16最近、“永ちゃん”こと矢沢永吉のことが気になってきた。永ちゃんをテレビで観るといつも“永ちゃん”である。発言、言い回し、仕草に至るまで、独自の個性を発揮している。おそらく矢沢永吉の素は違うのかもしれない。ただ、カメラやファンの前では“永ちゃん”を演じているのだろう。それに多くの人が魅せられ、そして人気を博しているのだと思う。
医療人や教育者にとっても、魅せ方は大事だと思う。接する相手に対し、最良の医療もしくは教育を提供するには、大学で努力して、知識・技術を磨くのは当然だが、それだけでは不十分かもしれない。相手に対し好印象に魅せる術も在学中に身に付けてほしい。そのためには魅力的な人にたくさん出会い、刺激を受け、それを糧に自分ができるオリジナルの魅力を醸成するのが良いだろう。
まだまだ自分も永ちゃんには敵わないけど、学生さんたちを魅了できる教員でありたい。そしていつか、成長して魅力的になった学生さんたちから刺激を受けた時に言いたい、「アイ・ラヴ・ユー、OK」! -
“ハッピー、ハッピー”
2021/05/11はじめまして!私の研究は、分野で言えば放射性薬剤学や組織化学です。もう少し分かりやすく言うと、診断・治療に使う薬の合成を専門としています。高校時代にはもの作りに興味を持ち、化学合成できればなんでも作れると考え、1回目は工学部応用化学科に進学しました。その後、医療に興味を持ち、2回目は歯学部へ編入して医療知識を得ました。そんなこんな複雑な経歴の詳細は省略しますが、医歯薬理工と様々な分野を渡り歩き、保健科学部にたどり着きました。今までの経験で判ったことは、まだまだ世の中には解ってないことがたくさんあるということ、そして解ることは楽しいということです。保健科学部では、解ったことが直接、患者さんの幸せにもつながります。解って楽しく自分もハッピー、そしてそれは誰かをもハッピーにできる、つまりは“ハッピー、ハッピー”です。学生さんがそんな人生を歩めるお手伝いをできたらと思っています。
写真はヴュルツブルグ大学へ訪問した際に訪れたレントゲン記念館での写真。1895年にX線が発見され、まだ126年しか経っていません。これからもまだまだ新しい発見をできるかもしれない。一緒にがんばっていきましょう!