教員からのメッセージ
画像解析学、分子イメージング技術学、核医学、磁気共鳴医学
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私にとっての聖地
2024/10/02令和6年9月25日、アルツハイマー病に対する疾患修飾薬「ドナネマブ」が、日本で製造販売承認を受けました。これは、昨年承認された「レカネマブ」に続く国内2例目の薬剤です。アルツハイマー病は、認知症が発症する前にアミロイドβプラークというタンパク質が脳内に異常沈着することが知られています。疾患修飾薬は、認知機能障害が生じる前にアミロイドβプラークを除去することで、認知症の発症を予防する効果が期待されています。1906年にアロイス・アルツハイマー博士がアルツハイマー病を発見して以来、長らく不治の病とされてきたこの病に対して、革新的な進展といえるでしょう。
ところで、先日、アルツハイマー博士が医学を学んだ大学であるユリウス・マクシミリアン大学ヴュルツブルク(ヴュルツブルク大学)との日独連携研究シンポジウムに参加するため、ドイツを訪問しました。ヴュルツブルク大学は、X線を発見したレントゲン博士が教授を勤めた大学としても有名です。診療放射線技師として認知症の脳画像を研究している私にとって、この大学はまさに聖地といえる場所です。今年10月から1年間、ヴュルツブルク大学に留学することになっており、偉大な先人達に恥じぬよう、医学の進歩に少しでも貢献できるような研究を行いたいと考えております。 -
放射線技術と人工知能
2023/06/21今年、診療放射線技師の国家試験の出題基準の改訂が発表されました。令和7年度の国家試験から適用される出題基準には、新たに人工知能が小項目として追加されました。これは、診療放射線技師を目指す学生が卒業する際に習得すべき知識の一つであることを意味します。
生成型AIが世界中から注目を集めている中、放射線技術分野でも人工知能の研究が盛んに行われており、臨床に応用される技術も急速に増えています。教科書には載っていない最新の技術を正確かつ適切に扱うことは、医療を支える技術者として必要なスキルだと私は考えています。そして、私自身がそのスキルを学生に教授できるよう、常に知識をアップデートしていくことの重要性を改めて感じました。
画像:生成型AI(Stable Diffusion)を用いて作成した画像(キーワード:radiological science, artificial intelligence) -
JRC2022に参加して
2022/04/204月14日から17日の4日間に開催されたJapan Radiology Congress (JRC) 2022に参加してきました。JRCは本邦の放射線医学、放射線技術学、医学物理分野で最も大きな学会であり、例年約2万人が参加します。年に一回、横浜で開催されます。私自身、学部生の頃から毎年参加していますが、機械学習や深層学習に関する演題発表が年々増加していると感じました。また、レベルの高い学生発表も多くありました。本学の学生にも研究の面白さを知ってもらい、研究成果を発表することで得られる達成感を味わってもらいたいです。
JRCでは100社以上が出展する機器展示(ITEM)も同時開催され、最新のCT装置、MRI装置、PET装置などの実機に触れることができます。メーカーの方から医療機器に関する詳細な説明をいただき、様々な最新技術を学ぶことができました。医療機器メーカーでは、診療放射線技師の免許を持つ人も多く在籍しています。本学の卒業生も医療機器メーカーへの就職という選択肢もあります。
今回は3年ぶりに現地参加することができました。研究室の先輩や後輩、共同研究者の方々、他の大学、病院、企業の方々と意見交換することができた有意義な学会参加となりました。
写真はJRC2022の開会式の風景です。 -
放射線を取り扱う技術者として
2021/04/09本学科では、診療放射線技師の他に目指せる資格として第1種・第2種放射線取扱主任者という国家資格があります。受験資格に制限がないため、医師や薬剤師、高校生など誰でも受けることができ、本学の在学中に取得可能な資格です。
放射線取扱主任者は、放射線を取り扱う事業(病院や研究所など)では1名以上を選任し、届け出ることが法律で定められています。主な業務は、放射性同位元素や放射線発生装置の使用や保管などに関する管理・記録や、放射線障害の発生を防止するための監督などです。
第1種放射線取扱主任者の試験合格率は30%前後と、簡単な資格ではありません。しかし、放射線を取り扱う技術者として是非とも習得を目指してほしい資格の1つです。 -
生体内の分子を画像化する
2020/12/02診療放射線技師が携わる画像検査は、マクロな解剖学的構造を可視化するだけではなく、細胞レベルのミクロな世界を生きたまま可視化することもできます。がん細胞は正常細胞と異なる代謝経路を持ち、多量のブドウ糖を取り込む性質があります。腫瘍の悪性度が高いほど、取り込み量が増大する傾向があります。また、認知症の代表的な原因疾患であるアルツハイマー病は、記憶障害などの認知機能障害が起こる20年以上前から、脳内に異常なタンパク質が沈着します。つまり、症状が現れる前から、脳内では病気が進んでいます。脳内の異常タンパク質を検出することで、認知症の早期発見が期待されます。生体内の分子の挙動を可視化する技術(分子イメージング)により、構造だけではわからない生理学的な機能や病理学的な変化を画像として得ることが可能となります。大学では、これらの放射線技術の持つ魅力を伝えていきたいと思っています。
写真 米国核医学・分子イメージング学会の風景 -
楽しく真剣に
2020/09/09はじめまして、診療放射線科学科の山尾天翔と申します。CTやMRIにより体内の画像が撮れることに魅力を感じ診療放射線技師の道に進みました。X線の発見から約100年の間、放射線科学は急速に発展し、多くの場面に利用されています。診療放射線技師はそれらを画像診断や放射線治療などの医療に活用します。様々な学問からなる放射線医学を習得するために、大学では基礎的知識から臨床的な内容まで広く学ぶ必要があります。そして、皆さんと一緒に楽しく真剣に臨みたいと思っています。