教員からのメッセージ
リハビリテーション、理学療法、運動器、運動学、動作分析
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模擬患者(SP)参加型授業の紹介
2023/09/06保健科学部がスタートして2年半が経ちました。令和3年4月に入学した1期生が3年生になり、理学療法学科では、9月からいよいよ県内各地の病院での臨床実習が始まります。臨床実習は、理学療法士が働く現場で直接学び、患者さんとのコミュニケーション能力を磨くことのできる貴重な機会です。しかし、医療という現場で、これまで出会ったことのない、幅広い年代の医療スタッフや患者さんと接するため、大きな緊張感の中での実習となります。
本学科では、臨床実習に備えて、学内で学んだ知識や技術の復習とともに、コミュニケーション能力を高めることを目的に、模擬患者参加型授業を実施しています。模擬患者(SP)とは、演習や技能試験等で患者役を演じる、訓練を受けた健康人のことです。保健科学部では、SPを一般市民から募集して養成しており、現在、約50名の方が参加されています。
このSPさん達にご協力いただき、3年生の5月の授業で医療面接の演習を行いました。そして、7月には、客観的臨床能力試験(OSCE)を実施しました。OSCEとは、臨床実習前や後に、面接を始めバイタルチェックや種々の検査、治療等をSPさんに対して行い、その技術やコミュニケーション能力を評価するものです。
SPさんのリアリティーの高い演技の下、学生たちは、臨床場面に近い緊張感の中で、演習や実技試験を受けることができました。そして、SPさんや教員からフィードバックを受けることで、自らの課題を認識し、実習に向けて新たな準備に取り掛かることができたのではないかと思います。
OSCE終了後のアンケートでは、「本当の患者さんみたいだった」、「普段できているはずのことができなかった」、「緊張感の中で試験を受けることができ、よい経験になった」「これからの勉強の仕方や患者さんへの対応で必要なことを学ぶことができた」などの感想が得られました。
学内での学びを円滑に臨床につなげていくために、今後も、模擬患者参加型授業を発展させていきたいと考えます。そして、学生が臨床実習を無事に乗りきり、大きく成長してくれることを祈っています。 -
ヒトの歩行はスゴイ!
2022/08/03これまで、患者さんや健康な人を対象として、歩行などの動作中の重心移動について研究してきました。重心は目で見ることができませんので、身体に40個くらいのマーカーを張り付けて、複数のカメラで追い、その位置情報から重心位置を計算する、または、床反力計という3方向の力を測定する機器を用いて計測します。
人間の重心は、両足で立っている時には骨盤の上方部分(へその高さより少し下)にありますが、しゃがんだり座ったりした時には、身体の外に飛び出すこともあります。
研究を通していつも感じるのは、ヒトの歩行はすごい!ということです。
通常の真っ直ぐな歩行では、それぞれの脚を交互に1m以上振り出しながら前進するにもかかわらず、重心の上下の動きも左右への動きもたったの3~5cmしか動いていません。身長のわずか2~3%という驚きの数字です。
また、身体を前進させるための最も大きな力源は重力です。ヒトは一定の速度で歩いている時でも実は速く動いたりゆっくり動いたりしています。振り子運動と同じで、重心の位置が高くなると動きが遅くなり、重心の位置が下がると速くなります。こうすることで、重心の上下移動を前方への推進力に利用しているのです。この重力の利用で、通常の快適な歩行では、前進運動に必要な仕事量の半分以上を稼いでいます。これにより、歩行に必要な筋肉の活動を最小限に抑え、疲れないようにしているのです。
その他にも、多くの機能を備えていますが、わかっていないことも多くあります。
皆さんも、理学療法学科に来られて、ヒトの動作のすごさ、巧みさを味わっていただくとともに、わからないことを解明していっていただければと思います。 -
「理学療法の日」をご存知ですか
2021/07/07私が東京の理学療法士養成校に通っていた昭和50年代頃、友人が市民大会に出場するということで会場まで応援に行きました。その時の選手紹介で、所属先の名前を「府中“リハバリ” テーション学院」とアナウンスされました。仲間と苦笑いしながら認知度の低さに少し残念な気持ちになったのを覚えています。その後、何年かして、「リハビリテーション」や「理学療法」という言葉が辞書にも掲載されていることを知り、大変嬉しい気持ちになりました。
日本で初めて理学療法士が誕生したのは昭和41年で、同年の「7月17日」に、第一回国家試験合格者110名で日本理学療法士協会が結成されました。協会では、この日を「理学療法の日」、前後1週間を「理学療法週間」と定め、理学療法に対する認知度や理解度を高めるために、全国で様々なイベントやセミナーを開催しています。興味のある方は、日本理学療法士協会や福島県理学療法士会のホームページに立ち寄ってみてください。
https://www.japanpt.or.jp/rigakuryohonohi/ -
福島に学ぶ
2021/02/03東日本大震災から10年が経とうとしています。
当時、私は、山形市内に住んでいたため、大きな被害を受けずに済みました。それでも、信号の止まった交差点や照明の消えた部屋、水の出ないシャワー、ガソリンを待つ長蛇の車列、食料品や飲料水の消えたコンビニなど、震災直後は、日常生活に多くの支障をきたし、色々と不安を抱きました。しかし、それらはほんの限られた期間内のことであり、日がたつにつれて、それらの不便さがいかに些細なことであったかを知りました。
福島では、震災を乗り越えてこられた方々から、強さや優しさについて学ばせていただけるのではないかと考えています。この福島で、福島の将来を支える若い人たちの育成に関われることを大変うれしく思っています。
これから入学してこられる皆さんとともに、福島県の方々のために貢献できるよう、微力ながら尽力させていただきます。 -
観察力を高めよう
2020/10/21スポーツの現場でコーチが選手のフォームのチェックや指導を行うように、理学療法士は、患者さんが日常生活の中で行う動作を観察し、何らかの問題がある場合は、原因を探り、改善を図ります。
例えば、歩行中によくつまずく患者さんの歩行観察では、つまずく脚の動きだけではなく、支える側を含めて身体全体を観察します。身体を支えている脚が不安定なため、振り出す脚をうまくコントロールできないことがよくあるからです。そして、通常(正常)の歩行と比べることで異常な動きを判断します。異常な動きの原因には、筋力や関節の硬さ、痛み、感覚、バランス機能など様々な要因が考えられます。そのため、観察から推測された全ての要因について個別に検査することで、つまずく原因をつきとめ、解決する方法を探ります。
このように、理学療法士には、動作を見る観察力と問題の原因を推理・確認する能力が求められます。 -
一緒に新しい歴史を刻みましょう
2020/08/19京都で約20年間理学療法士として臨床に従事し、その後、山形で16年間教員を勤め、そして、今年の4月より本学でお世話になっています。
臨床では、厳しい環境の中で病気や障害と一生懸命戦う人たちから、多くのことを学ばせていただきました。山形では、心優しい多くの学生や教員に恵まれ、楽しく?教育や研究、課外活動に励むことができました。
新しい学部を創るということは色々困難を伴うとは思いますが、それだけやりがいがあり、こういった機会に巡り合えたことに感謝しています。
本学において、皆さんと一緒に、楽しく、新しい歴史を刻んでいけるよう、最善を尽くしたいと考えています。