教員からのメッセージ
発達障害作業療法、放課後等デイサービス、作業科学
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得意なことを創造的に
2024/06/12私が関わっている子どもたちは、絵や工作が得意な子や、昆虫や歴史の知識については誰にも負けない博士さんが多くいます。しかし、素晴らしき才能を持った子たちの中にも「文字の読み書きができない」、「計算が苦手」など、それぞれに不得意なことを抱えながら生活をしています。私は、作業療法士として子どもたちの“得意”を生かす活動が出来ないものかと、常日頃から考えています。
そして最近、非常勤先の勤務で3Dプリンターを用いた『お仕事工房』なるものを始めました。この取り組みは、子どもたちが通う放課後等デイサービス事業所内の困りごとに対して、子どもたちが“ものづくり”を通して解決していこうというコンセプトです。
現在、抜群にスケッチが上手だけど、ちょっぴり国語と算数が苦手なAさんと実践中。職員からの依頼について、アイデアをスケッチし、大きさや厚さなどの寸法を計算することに奮闘しつつも、とても楽しく活動しています。写真は、記念すべき第1号の「けん玉ボックス」です。
第2号は、脱着できる鉛筆立てのモデリングを始めました。そもそも“脱着って何?”と気になったAさんでした。ことばの意味も調べながら、ゆるりと実践していこうと思います。 -
行動は引き出されるもの
2023/04/12日ごとに日差しが暖かくなり、彩り豊かな花木が芽吹く季節を迎えました。
日本では4月を卯月と呼びます。これは十二支の4番目の「卯」が由来するとも、稲を植える月から由来するとも言われています。何かを始めるには良い季節であるように感じます。そして、今年は卯年!大きくジャンプするために何かを変えたい、始めたいと思っている方が多くいるのではないでしょうか。
私たち人間は、何かしようと頭で考えてから行動するものと考えられています。しかしながら、「勉強をしようと思ったけど、ちょっと休憩してから・・・」と、❝つい❞ ベッドに寝転んでしまったり、「ランニングをしようと思ったけど・・・寒いかぁ」など、思い立つも周囲の環境に流されて、事を成すことが出来なかったという経験はありませんか?
私たちの行動は、思いのほか目の前にあるモノやバショ、コトに左右され、いとも簡単に意志を折り曲げられてしまうものです。James Gibson氏は、自分ではそれをしようとは思っていないのに、環境に誘われて ❝つい❞ やってしまう現象を、❝アフォーダンス(affordance)❞ と表現しました。この理論は、人の行動は環境によって引き出されるという考え方です。自分の作業と環境との密接なつながりがあり、作業に向かいやすい環境を整えることで、行動とパフォーマンスが引き出されます。
新しい生活が始まりやる気に満ち溢れているこの時期。その気持ちを途切れさせる事なく、自分がやりたいこと、やるべきこと、やることが期待されていることに向き合える環境を作ってみましょう!
ちなみに私は、彼を見掛けるとついつい遊んでしまいます。 -
生活のほどよいバランス
2022/04/13新年度を迎え、皆さんはいかがお過ごしですか。春は、今までの生活環境や習慣が大きく変化し、生活リズムが崩れてしまいがちです。不慣れな環境や物事に囲まれると、心身ともに余裕がなくなり、強くストレスを感じるものです。そのような時は、一日の生活の作業の「数」や「質」を見直してみると良いです。
ひとは、さまざまな種類の作業を“ほどよい”割合で行うことで、作業バランスが良い日常を送ることができます。作業の数が多すぎると、忙しすぎたり、どれもこれも中途半端になることがあります。一方で、作業の数が少なすぎると、ヒマを持て余し、不規則な生活になる場合もあります。しかし、生活のバランスが良いかどうかは、単純に作業の数や時間の量だけで決まりません。作業に対する自分なりの意味があることや、やることへの価値が見出されているかが重要です。そのため、自分にとって大切な作業を見つめ、意味や価値を認識しながら、メリハリを持った生活を組み立てることが大切だと考えています。
まずは、一日の作業を時系列で書き出してみてはいかがですか?皆さんがどのような作業を、どのような「想い」で行いながら生活しているかが見えるかもしれません!
ちなみに、私にとって大切な作業は、愛猫のご飯を作ること。一日の全てはここからスタートします。 -
未来の自分になっていく
2021/04/09厳しい冬が過ぎ去り、肌寒さにも暖かい春の香りを感じ始める季節。多くの人々は、それぞれの門出を迎え、未来の自分に向かってその一歩を踏み出したことでしょう。
現代を生きる私たちは、将来なりたい職業を選択する自由が保障され、自分の意思で進路を決めることができます。しかし私たちは、進学や職業など将来の選択を迫られたとき、何を思って決めるのでしょうか。そこには、過去の自分の経験や思いが強く影響しています。
オーストラリアの作業療法士であるアン・ウィルコック氏は、「何をしてきて、何をしてこなかったかによって、今の自分が存在している。それならば、これから何を行い、何を行わないかによって将来の自分が現れてくるだろう」と言いました。
作業療法の世界では、作業することによって、自分自身がどのような存在であるか定義されると考えています。そして、どんな生涯を送り、どの集団に属するかも決まっていくと考えています。
あなたが過去に下した選択と行動が、現在のあなたという存在を表しているのであれば、その選択し、経験したことは土台となり、あなたを支えているはずです。全ての未来は、今の自分の行動と経験の先にあります。あなたの今を大切に過ごしてください。 -
“ものづくり”と作業療法
2020/12/02作業療法では、対象者が思い描く生活を実現するために、“自助具”を作ることも大切な仕事のひとつです。従来は、作業療法士が対象者の生活や実現したいことに必要なものを想像しながら、その場にある素材や限られた予算の中で材料を購入し、作成していました。
しかし近年、3Dプリンターの登場によって、誰もが簡単にイメージを形にできるようになってきました。また、世界中の人々が公開したデザインを加工することができ、思い立った時に素早く、欲しいものを手にすることができます。これからは、対象者自らがデザインに関わり、作業療法士と協働しながら“自分だけの道具”を作ることが当たり前となる時代が来るのだと思います。
新しい技術は我々の選択肢を豊かにし、作業療法をより面白くしてくれます。そして、対象者の生活を豊かに彩るための“ものづくり”は、作業療法士にとって大切な技術だと考えています。何か作ることに興味がある学生さん、一緒に手を動かしてみませんか!
※3Dプリンターで手部の模型を作成しました。 -
“楽しく遊ぶ”が子どもの“できた!”を育てる
2020/09/09私は小児領域の作業療法士です。主に、発達障がいのお子さんに「遊び」を用いた作業療法を展開します。子どもは遊ぶことで多くのことを学び、成長します。その「遊び」を科学的に捉え、子どもが主体的に参加できる演出を心がけています。そして臨床現場では、できるようになったことを「先生ぇ!見て見てぇぇぇ!」と自慢する姿を目にすることが何よりも嬉しい瞬間です。“楽しく遊んでいたら、いつの間にかできた”を目指す、それが小児領域の作業療法の醍醐味だと感じています。
子どもに関わる仕事をしてみたいなという気持ちがあれば、私たちと一緒に学んでみませんか!